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ま、タイトル通り「あったってなくたって大してかわりゃしない(by古今亭志ん朝師匠)」blogであります(苦笑)。

「新・盛り場ブルース」里見洋と一番星

え?何このグループ名?ついにひっさつさん(ぬいちゃんでも可)、演歌好きになっちゃったの?とお思いの方、さにあらず。このグループ、確かに名前だけ聞けばムードコーラスグループなのだが、かなりロック的な精神を内包したグループだったらしく、例えば、スペンサー・デイヴィス・グループの「ギミ・サム・ラヴィン」のようなアップテンポなアレンジで「長崎は今日も雨だった」を歌っちゃったりするようなかなりはじけたグループだったそうな(このエピソードだけ聞いて物凄いと思う人も、大分少なくなってしまっているんだろうな…)。
メンバーは以下の通り。

  1. リードボーカル:絵川たかし(元「ザ・ヤンガーズ」というGSでリードヴォーカルを務めており、その頃から「普通に歌ってるのに裏返ってしまいそうな」声と歌い方の持ち主としてカルト的に知られていた。後に和田弘とマヒナスターズにも参加したりしたものの、現在は会社の社長さんだそうな。何の会社かは失念してしまったが)
  2. パーカッション:里見洋(言うまでも無くバンドリーダー。北九州で「里見洋とロス・カンターノス」というラテン・コンボを立ち上げており、東京進出とともに「レオ・ビーツ」と改名、GSスタイルのバンドとなった。その後、レオ・ビーツはソフト・ロック的なバンド「ルート№1」というバンドになり、さらにそのバンドが発展解消したのがこの「一番星」というわけである。尚も何人かのメンバーは「ブルー・ジャッカス」というバンドに移行した)
  3. ギター:古賀修(やはり「レオ・ビーツ」〜「ルート№1」からのメンバー。「ブルー・ジャッカス」にも参加している。現在はギター教室の先生をしているらしい)
  4. ベース:中野健二(同上。最初はドラム担当だった。彼も「ブルー・ジャッカス」に参加)
  5. オルガン:土屋守(元「アダムス」というGSのキーボード担当。当時からニックネームは「まもちゃん」…って君はタキシード仮面か(笑)。この「一番星」のみの参加)
  6. ドラムス:東信行(「レオ・ビーツ」〜「ルート№1」からのメンバー。「ブルー・ジャッカス」にも参加している。何と元々はリードヴォーカルだったのだが…)

この「新・盛り場ブルース」は彼らのデビュー曲。発売年は1971年というから、もうGSブームは去り、新たにフォーク・ブームが訪れようとしていた頃である。確かレッド・ツェッペリンが来日したのもこの年ではなかったか…。
そのせいか、彼らのサウンドは、ムード歌謡の枠を大きく超え(というか逸脱して)、かなりロック色の強いアレンジを前面に押し出しながらも、彼らの原点であるラテンの要素も多分に含んだ(と言ってもパーカッションだけだが)画期的なサウンドになった。
尤も、あまりに画期的過ぎたせいか全く売れなかったのだが…しかし、今日ではかなりディープな歌謡曲ファンから再評価を受け、カルト的に人気曲となっている(何か私が紹介する曲ってこんなんばっかしだな)。
絵川の素っ頓狂なヴォーカル、しっかりしたリズムセクションが作るラテン・ロック色の強いサウンド、狂おしく響き渡るオルガン…歌詞さえロックっぽくすればハードなサンタナのカヴァー曲と言っても分かるまい。何せ元歌は森進一が歌った「盛り場ブルース」である。それがこんなんなっちまうんだから…やはり突然変異としか言いようが無い。こういう楽曲、今のミュージシャンにできるんだろうか?面白そうだけど誰もやっちゃくれないんだろうな…。
音楽に決まりきった形というものはない。ましてヒットの方程式なんてない。
ヒット曲の大部分は恐らく偶然で出来るものなんだろう。
だったら、全ての可能性を試してみることは悪いことではないんではないだろうか。
こういう曲を聴いていると尚更そう思えてくる。
ただ…こうも懲りすぎると却って売れなくなるってのは、今も昔もあまり変わらんなぁ…。
因みにこの曲は、GSの元メンバーたちがリリースした楽曲を集めたテイチクから発売されている「GS卒業生紳士録」というCD他に収められている。