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ま、タイトル通り「あったってなくたって大してかわりゃしない(by古今亭志ん朝師匠)」blogであります(苦笑)。

泡沫GSの話も。

所謂「カルトGS」と呼ばれるGSにも大きく分けて二種類存在する。一つは、後年若いファンたちによって再評価されたGS、いま一つは、当時の人たちに聞いてもぜんぜん知らないと応える人の数が圧倒的に多い(はずの)GSである。今日紹介するのは、完全に後者に分類されるバンドである。
私のカルトGS道の師匠の一人、”21世紀のGS”として所沢・西東京方面で活躍中のアマチュアバンド、ザ・セント・オー・ジーンズのギター、ヴォーカル及びリードMC(笑)担当のハタヤン大先生も「カルトGSコレクション」で初めて知ったという「江田聖明とザ・ブレイズ」を取り上げてみる。
元々はギターの内田英二、ベースの可愛のぼる、ドラムスの福原昭一という日大一高出身の3人で結成された今で言うところのスリー・ピース・バンド「ザ・ブレイズ」に少女雑誌「美しい十代」のマスコット・ボーイだった江田聖明がヴォーカルとして加わったグループで*1、GS末期を象徴するかのような現実感まるでなしのメルヘン・アイドル・バンドである。
私が最初にこのバンドのことを知ったのは「筒美京平コレクション」…だったかな?ちょっとタイトル度忘れしてしまっているが、日本のポピュラー界を代表する作曲家・筒美京平氏の作品を集めたCDである。このグループの二枚目にしてラストシングルとなってしまった作品「卒業の季節」が筒美氏の作品なのである。
この「卒業の季節」も、デビュー曲の「美しい愛の悲しみ」も、どちらもどちらかと言えば歌謡曲っぽい作品であり、GSの特徴とも言えるギター中心のポップ・ロック・サウンドという体裁ではない。そこのところでまず若い世代のカルトGS者はそっぽを向くであろうし、更に当時は全く売れていなかったことからすると、リアルタイム世代にもその知名度はあまり高いとは言えないようなバンドである。
でもなぁ…何かこう、その時代だからこそ為し得た狂気の成果、と言えばいいのか、今だったら笑い飛ばされる以外に何もないだろうけれど、当時の数少ない女性ファンたちはこの曲に胸をときめかせていたんだろうなぁ…と思い直すことにする。理由?…私も年をとったと言うことかもしれない。
それでは説明になっていないかもしれない。ただ、今日たまたまラジオで流れていたDJ OZMAとか何とか言う輩の悪乗りに比べたら、この程度のこたぁ屁でもないだろうさ。ヴォーカルの江田聖明がステージに跪いて「ラーブミー、きみさー、オーラブミー」と絶叫するくらいまだましでしょう。
何て言うのか、NHKは何ゆえあんな輩を二年前(になっちまったんだねぇ)の紅白に出しやがったのか。今日ラジオで流れていたのはそん時にやったもの(「歌った歌」とは死んでも呼んでやらない。こんなのを音楽だと認めたら私は音楽の神に祟られる)だったんだが、どっからどう聞いてもNHKが許容するとは到底思えないような代物を。昔はこういうグループは問答無用で紅白はおろか一般的な歌番組にすら出さなかったと言うのに。まぁ、時代はどんどん地すべり的に緩くなってゆくんだねぇ。
いずれすべての秩序が崩壊したらもっともっと音楽シーンはつまらなくなりますよ。何故かって?そりゃ簡単だよ。「何も表現しなくても楽しけりゃいい」というこんな手合いが多くなったら、ばかばかしくて音楽なんぞやるやつぁいなくなるからです。で、ちょっとウケ狙いでこんなことをやる奴ばかりが目立つようになるから…ね?救いよう無くなるでしょう?
話を戻す。この時代だからこそ出来たのであって勿論今やれとは私もさすがにいえない。ただ、土台としての音楽性というのか、基本的に音楽でウケをとりなさいよ、ということです。ノリですべて解決できるはずがないわけだし、そのノリにしたところでそもそも音楽から派生したもんである以上、ノリだけで何とかなるものではないわけだからね。そこへ行くと、「美しい…」は村井邦彦、「卒業の季節」は筒美氏、それぞれその時代を代表する作曲家の手による作品で、多少無理はあるものの、ポップスとしては凡そ完成しているとみていい…はず(「美しい…」はやや暴走気味かな?とも思えるが)。歌詞にしても、物故した林春生氏が情緒纏綿たる歌詞を手がけ、気恥ずかしいまでのメルヘンの世界を描写している。つまり、「作品」として、という点が(その質は問題としても)考慮されているんである。ま、ヒットしなきゃしょうがないのはいつの時代も同じなのだが、でもDJ何とかやらに比べたら、まだカルトGSの時代は遥かに音楽と呼べる代物が多かった…ような気がする。
そう言えば、今は本当の意味での「コミック・ソング」ってないよね?歌い手の格好でなく、歌詞の面白さで笑わせるような歌はたぶんもっとないのではなかろうかと思う。もはや人々は何が面白いのか何が素晴らしいのか、その価値観すら分からなくなってしまったのであろうか、と思うと、これからの表現者たちはもっと悩まなければならないはずなのである。あぁそれなのにそれなのに、今日も儲けりゃいいという適当クリエイターの何と多きことか…。
何だか今回は話が脱線してばかりだなぁ…おまけに上手くまとまっていないし。と言うわけで、来週は「ザ・ダイナマイツ」でいっちょ行ってみますか。
追記:3月12日、卒業まであと5日…そして、その日、3/17は定例会の翌日です(意味不明)。

*1:クレジットを見ると「ヴォーカル、リードギター」となってはいるが、実際にギターを弾いていたかどうかはこの曲調からすると怪しいもんである。