久々の第5回 おしりかじり虫、謎のMS小隊に”可愛がられ”る
今、正に僕が撃たれようとしたその時だったんや。
「どうした?こんなところで何をやっている…ん?何だこの妙ちきりんなのは?」
「ガイア中隊長、モビルスーツじゃないようですぜ」
「見たこともない生き物だな…何なんだこりゃ?」
黒くてごっつくて何となく”ザク様”っぽい感じの偉そうなモビルスーツが三体、ずかずかと入ってきたんや。
「はっ!?こ、これはガイア大尉にマッシュ中尉、それにオルテガ中尉も?」
「何てことだ!かの”黒い三連星”揃い踏みとは!」
「これは興味本位の射撃練習どころじゃないぞ!」
あっという間にさっきまでえばりちらしていた”ザク様”たちはそそくさと逃げ出してしもたんや。
「全く…射撃練習だったらこんな逆さ吊りなんぞにしなくてもいいだろうて」
ガイア大尉と呼ばれた斧みたいな刃物を持った”黒くてごっついザク様”はそう言って、僕をおろしてくれたんや。
「あ…ありがとうございます…」
「勘違いするなよ、虫けら!」
マッシュ中尉と呼ばれた”黒くてごっついザク様”は空いてる左手で僕を縛ってる縄をぐいっと引っ張ると、右手に持ってるバズーカみたいな飛び道具をちらつかせたんや。明らかに脅しとるんやな。
「逆さ吊りにされた獲物を撃てば射撃訓練になるなんて、俺たち”黒い三連星”はこれっぽっちも考えちゃいねぇのよ…事と次第によっちゃぁ、有無を言わさずズドン!と行かせてもらうぜ…」
オルテガ中尉と呼ばれた”黒くごっついザク様”がドスの利いた声でそう言ったもんやから、僕は助かったと思うてたのに、またごっつ不安になってきてしもたんや。
「安心しろよ…『事と次第によっちゃ』って言ったろ?お前が俺たちにホントのことさえ話してくれさえすりゃぁ、お前を放してやってもいいんだぜ?」
少し縄を持った手を緩めながらマッシュ中尉がそう言うたんや。
「ホントのことって?」
「お前、何でこんなところへ来た?ここがジオン公国軍の駐屯地だと知ってわざわざ来たのか?」
ガイア大尉が斧(これヒートホークって言うらしいんや)をちらつかせて言うたんや。
「いや…そんなことこれっぽっちも…」
「嘘をつけ!」
マッシュ中尉がまた縄を引っ張ったんや。
「さぁ言え!貴様の本当の目的は一体何だ!?」
「やーめーてー!たーすーけーてー!」
何や、さっきと全然変わらないやんか…。
「厳戒態勢なんぞあってないようなもんだな…こんな訳の分からない虫けらまではいってくるようになるなんてな…」
吐き捨てるようにオルテガ中尉がそう言うたんや。
「お前、『おしりかじり虫』って言うらしいな?」
突然、にっと笑ったガイア大尉がそう訊いてきたんや。何や、一体?
「は…はい…」
「怖がらなくていいんだぜ…そんな名前がついてるってことは、当然ケツをかじる虫ってわけだ…
そうだな?」
「はい…そ、そうです…」
「お前は何でケツをかじるんだ?何のためなんだ?」
「な…何のためって…それは…ぼ、僕が…おしりかじり虫だから…」
「ふざけるな!答えになってねぇだろうが!!」
マッシュ中尉が縄を引っ張った。痛い、痛いがな。
「マッシュ、止せ…痛がってるじゃねぇか…お前は本当にここがジオンの駐屯地だって知らなかったんだな?」
「は…はい…でも、何でそんな事訊くの?」
「なぁに、何でって特に理由はねぇんだが、まさかジオンのモビルスーツのケツをかじりに来たとか言うんなら、大した豪傑だと思ったからよ!」
「ケツだけに…豪傑?」
「何だよ!?こいつ、虫の癖に駄洒落を知ってやがるぜ?」
「ホントだ!おい結構愉快な虫けらじゃねぇか!」
「はははははは…」
僕が何とはなしに言うた駄洒落で、何故かこの”黒い三連星”とか何とか言う三体の”黒くてごっついザク様”たちは大っぴらに笑い転げたんや…ひょっとしたら、僕、助かるかも知れへん…そう本気で思えたんや…。
(つづく)