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ま、タイトル通り「あったってなくたって大してかわりゃしない(by古今亭志ん朝師匠)」blogであります(苦笑)。

「愛ゆえに」マリア・タチバナ(高乃麗)&真宮寺さくら(横山智佐)

 何だか久しぶりのこのコーナー、今回からしばらくの間、何故か「ニコニコ動画」経由ではまってしまった伝説のドラマティックアドベンチャーゲーム(という名のギャルゲー)「サクラ大戦」シリーズで使用された曲を紹介してみたい。

 そもそも、このゲームが世に出たのは私が学生だった頃。その頃の私は、全くその存在は把握しきれておらず、「よくあるギャルゲーの一種」くらいにしか思っていなかった。
 それが、何故か今頃になってはまっちゃったのである。
 無論、私の部屋にはセガサターンドリームキャストもありゃしないし、プレイステーション3だって持ってはいない。
 近年はPCソフトも出回っているらしいが、今の身の上ではまず持つことは無理である。
 と言うことは、ゲームを実際にやってみて、という形ではない、ってことになる。
 しかしながら、嘗て存在した月刊マンガ雑誌「マガジンZ」に連載されていた徳光康之というジオン公国軍おたくの漫画家の作品「濃爆おたく先生」「濃爆おたく大統領」という作品で、ガンダムネタと平行してしばしば登場する「サクラ大戦」ネタや、単行本のおまけである「サクラ大戦追っかけマンガ」などで、ある程度の予備知識はついていた。その登場するネタの正確な出典やら因果関係やらは分からないことが多かったが、まぁとりあえずはまりこめそうな作品なのであるな、ということは大体把握できたつもりであった。
 で、資格試験の勉強の間に気分転換に「ニコニコ動画」を見ていたら…プレイ動画やらMADムービーやらの数の多いこと多いこと。しかも、主人公・大神一郎*1の人気の凄まじいこと!そして各キャラをリアルタイムで追っかけたファンと思しき人々の書き込みの熱いこと!
 そして、歌謡ショウ*2の映像…止めを刺したのはこれであった。
 舞台の煌びやかさ、面白さもさることながら、「花組カメラ」と称される、出演者がまわす手持ちカメラが映し出す光景…舞台裏での開演前の緊張した表情や、練習風景などの合間のリラックスした雰囲気、冗談も飛び交う明るい休憩時間…こんな情景から私が思い浮かべたのは何故か高校時代の合唱部での思い出であったのだ。
 定期演奏会のミュージカルの練習がちょうどこんな感じだったなぁ…と。
 いつも冗談ばかり言ってみんなを笑わせているお調子者がいて、ひどくまじめなやつがいて、よく練習で同じ所ばかり間違えるやつがいて、合宿の休憩時間の食事が物凄く楽しみなやつがいて…いろんな人が集まってひとつの舞台を作り上げてゆく…図らずもこんな無職の甲斐性なしが僅かな間ではあるが経験したことのあることが、形を変えて目の前にあったのである。
 そんな既視感が胸を衝き、気がついたらすっかりはまっていたのである。

 さて、前置きが長くなった。
 今回取り上げるのは、第1回歌謡ショウのメイン・テーマ曲「愛ゆえに」である。
 ゲーム「サクラ大戦」の中でもこの舞台劇「愛ゆえに」のシーンは登場しているが、ラストシーンが、さくらのミスで舞台がめちゃめちゃになってしまうという大惨事(笑)が起こったため、このメインテーマ曲は寧ろ舞台での方が知られているのかもしれない。
 革命による動乱の巴里を舞台にした陸軍士官オンドレと貧しい花売り娘クレモンティーヌの悲恋を描いた物語をドラマティックに締めくくるのがこの曲である。
 「サクラ大戦」のヴォーカル曲は、作曲が音楽担当の田中公平、作詞がプロデューサーの広井王子でほぼすべて作られているのだが、元々作曲ではなく音楽家生活を編曲家としてスタートさせた田中公平の見事なまでのスケール感のある楽曲と、的確な言葉を選びに選び抜いた広井王子の歌詞が絶妙に相俟って、そこに歌い手の個性と力量という要素が加わることによって正に珠玉の名曲となってゆく…そんなふうにして出来上がった作品は何と200曲近くあるといわれているのである!一つのゲーム作品の関連作品としては異常とも言える多さであろう。
 オンドレ役は、歌劇団の男役トップにして、戦闘時には卓越した射撃の腕前と的確な判断力で部隊を支えるロシア人とのハーフ、マリア・タチバナ。演ずる高乃麗はジャズシンガーとしても活躍するハスキーな声が魅力的な声優である。
 クレモンティーヌ役は、「サクラ大戦」のメイン・ヒロインでもある、北辰一刀流の達人にして、帝国歌劇団の期待の新人、真宮寺さくら。演ずる横山智佐は…説明要ります?私にとってはこの人といったら「ジャンプ放送局(うわっ懐かしい!)」の「ちさタロー」なんだが(笑)。
 曲調はどこからどう聞いても宝塚歌劇団っぽいノリのスケールの大きなメロディが特徴的な愛のバラード曲。しかしながら、ここ最近のJ−POPと呼ばれる音楽が到底表現し得ないものがたぶんこの曲も含めた「サクラ大戦」の一連の楽曲群にはあると私は思う。
 多少ケレン味が過ぎるかもしれないし、少々大げさかもしれない。でもいいじゃないか。
 別の映像では、作曲者・田中公平はこう語っていた。
 「歌謡曲の復活…っていうことをまず広井さんから言われまして、よし、やろう!と」
 こうして出来上がった数多くの曲は、確かに歌謡曲と呼ばれる昔ながらの曲の様な聞き心地の作品が多くなった。どこか懐かしく、ひょっとしたら自分が生まれる前に本当にこんな曲が流行っていたのではなかろうか?と思わずにいられなくなる曲もある。
 そう、これは今時のJ−POPではない。歌謡曲なのである。
 そして、更に付け加えて言うならば、ただの歌謡曲ではなく、必ずそれに付加価値がついて、より一層素晴らしさが増すのである。
 日本のヒット曲の中にはデュエット曲がかなり多いが、その多くは、大体人気や知名度がどっこいどっこい位の歌手二人を並べて一緒に歌わせてみました、程度の作品が多い。従って、音楽的な内容などは殆どと言っていいほど問われないものが嘗ては多く存在したものだった(「銀座の恋の物語」とかね)。
 海外のポップスの影響などからか、日本でも遅ればせながら1960年代から1970年代にかけて、デュエット曲でもハーモニーを強調したような作品が多くなっていく。「愛の奇跡(ヒデとロザンナ)」「ナオミの夢(ヘドバとダビデ)」「カナダからの手紙(平尾昌晃と畑中葉子)」エトセトラ…挙げれば数限りないくらいである。
 こうした曲の殆どは、何故か理由はよく分からないが女性がハーモニーに回ることが多い(前に挙げた例で行けば「愛の奇跡」と「カナダからの手紙」が該当する)のだが、寧ろこういうラブ・ソングの場合は女性リードヴォーカル、男性がハーモニーに回る方がどちらかと言えば無難な気がするというのが私のごく個人的見解である。
 一応この曲の二人は身分の違いを超えて結ばれたがっている。悲恋ものの主役二人の宿命といえばそれまでだが、この場合はクレモンティーヌの方が抑えきれない思いを歌に託している感じが強い。
 「今すぐ来て」「好きと言って」と強くせがむ歌詞からもそれは伺える。これに対して、オンドレはようやっと台詞部分で「たとえ君がどこにいようと/誰のものになろうと/僕の愛は変わらない」と答えるのである。
 女性の思いの強さをメインのメロディが歌い上げ、それに応じる男性の心をハーモニーが補う、という流れの方が、ラブソングとしては必然であるし、ましてやドラマティックアドベンチャーゲームのキャラクターが歌っているということは、聞き手であるファンの多くは女性キャラのファンである男性であることを考慮すると、この見解は強ち間違いではないと私は考えるのである。
 そんなまっすぐな思いを、横山智佐の声が歌に乗せ、応じる高乃麗のハスキーな声が真摯に受け止める…そんな流れで、この曲は進行してゆく。
 宝塚調+歌謡曲+ハーモニー、それに歌い手二人の声の魅力が加わってこの「愛ゆえに」は完成したのである。
 しかし、広井・田中コンビはこの成功に飽き足らず、後に前半部をすべて書き直した「新・愛ゆえに」という更なる傑作を生み出すのである…何か知らんが凄すぎである。
 とは言うものの、すっと曲の世界に入り、後はひたすらメロディの流れるままに素直に感動に浸れる「愛ゆえに」の方が私としてはお気に入りなのだが…。ま、それは後ほど述べることとしよう。
 

 

*1:サクラ大戦」第1作(以降「1」〜「サクラ大戦4〜恋せよ乙女(以降「4」)までの主人公。海軍士官学校首席で卒業したエリート士官であったが、帝国華撃団なる秘密部隊の隊長として、そしてその隠れ蓑として「大帝国劇場」のもぎり係として日々を送ることになる。これだけたくさんの女性キャラを口説いても批判されないどころか「大神なら許す」「隊長なら仕方ない」など、ニコニコ動画視聴者であるオタク系男子たちからはかなり賞賛と尊敬を集めている、ギャルゲー主人公としてはかなり珍しい男である。「1」及び「サクラ大戦2〜君死にたもうことなかれ」では帝都・東京を徳川の残党・黒之巣会(くろのすかい)及びその生き残りである魔王サタン、更に陸軍のクーデターを隠れ蓑に陰陽の術を使って帝都を混乱に陥れた黒鬼会(こっきかい)の魔手から守り抜き、その功績により中尉に昇進、特別留学生として「サクラ大戦3〜巴里は燃えているか」でフランスはパリに留学、そこで結成されたばかりの「巴里華撃団」の隊長に就任、太古の巴里を取り戻さんとする巴里の怨霊・パリシィたちの手から巴里を守り抜き、「4」にて再び帝都に復帰、帝都を混乱させた大久保長安の亡霊を帝都・巴里両華撃団の協力を得て鎮めた。

*2:ゲームのキャラを演じた声優さんたちがそのまま舞台でキャラクターになりきって「歌い踊り舞台にかけ」る出し物。